No.238
2001.1


ISASニュース 2001.1 No.238 

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ロボット探査機による小惑星巡り

吉 川 真


 いったい小惑星というのはいくつ存在しているのでしょう。そんな疑問が,最近,あらためて強いものになってきました。それは,増え続けている小惑星の発見に益々拍車がかかってきたからです。

 20世紀末の時点で,正確に軌道が分かって確定番号が付いた小惑星が約2万個。軌道がそれなりの精度で算出されたものを含めると,ついに10万個を超えました。さらに,観測されただけで軌道が計算されていないものがこの何倍もあります。また,小惑星が存在する領域も,小惑星帯に限るものではありません。水星軌道の内側から冥王星軌道のはるか外側まで,太陽系全体に広がっているのです。


図1 20世紀末の時点で確定番号が付いた約2万個の小惑星の2001年1月1日における位置(軌道は内側から、水星・金星・地球・火星・木星)

 ところが,探査機がそばまで行った小惑星は,まだ片手で数えられるくらい。まだまだ未知の世界が広がっているといっていいでしょう。

 さて,時は変わって西暦20XX年。ついに,高度な人工頭脳を持ったロボット探査機が打ち上げられました。このロボット探査機は,自動的に小惑星を次々と訪れて探査をするように設計されています。つの小惑星に到着すると,まずその周りから観測を行い,次に特殊な機能を持ったローバーを降ろします。表面の詳細な探査はそのローバーに任せて,探査機自体は小惑星の軌道運動を利用しながら適当なタイミングで次の探査目標へと飛び立っていくのです。

 西暦20YY年には,このようなロボット探査機が多数太陽系内を飛び交うようになり,人類は地上にいながらにして,次々と小惑星のデータを得るようになりました。この頃には,IMPACTSと呼ばれる惑星間空間天体追跡システム(Interplanetary Moon, Planet, Asteroid, Comet Tracking System)も稼動し始めています。これは,20世紀末に開発されたGPSシステムを太陽系空間に拡張したようなもので,このシステムによって太陽系内の天体や探査機の追跡が高精度かつ効率的に行われるようになりました。

 ロボット探査機から送られてくる映像や各種データは,小惑星なんかすべて同じ石ころのようなもの,という先入観を完全に吹き飛ばすようなものでした。地球上の山が一つ一つ異なるように,小惑星もそれぞれ個性を持っていたのです。そして,多数の小惑星のデータを総合的に解析し相互に関連することを結びつけることで,原始太陽系の真の姿に迫ることももう間近になってきました・・・

 こんなことが実現することを夢見ながら,20世紀から21世紀への時の移り変わりを過ごしています。実際には,技術的な難問が沢山あることでしょう。でも,不可能であるとあきらめずに,いつの日にか現実のものになることを期待したいと思います。

 夢はさらに続きます。西暦20ZZ年のとある日の夜。街の明かりは消されて,人々は夜空をじっと見つめていました。すると,星空の中にぽつりぽつりと新たな星が輝き出したかと思うと,瞬く間にその数が増えて,あっと言う間に天の川のような光の帯が夜空にかかりました。そうです。これが小惑星に降ろされたローバーのもう一つのミッションなのです。ある時刻に地球に光が到達するように,各ローバーからレーザー光線が発射されたのでした。人々は,このときに初めて多数の小惑星の存在というものを肉眼で実感したのです。小惑星からの光の帯の,何と美しいこと・・・・

(よしかわ・まこと) 


図2 ロボット探査機による小惑星巡り
(友人から送られた絵はがきに筆者が一部改変した:原画はPaul MuGehee氏)


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