No.238 |
ISASニュース 2001.1 No.238
|
|
---|
|
マイ・ローバ久 保 田 孝惑星探査が多くの人の関心を集めるのは,見たこともない光景が次々と展開され,わくわくするような発見や感動があるからでしょう。「知らないことを知りたい」という好奇心は,誰もがもっているものです。かくいう私も宇宙を探検したい一人ですが,できるだけ楽に探検をしたい。「楽」というと「若者は楽ばかり考えて」と思われるかもしれません。でも,地球上にいて安全に,手軽に,楽しく,宇宙を覗いて観ることができるといいなあと思います。もちろん宇宙へ飛び出してみたいという気持ちもあることはありますが・・・・。 さて,将来の惑星探査はどのようになっていくのでしょうか。太陽系の起源と進化を解明するという壮大な目的のために,探査機のリモートセンシングによりさまざまな惑星を広く調べることから探査がはじまりました。そして月・火星を集中的に深く研究する時期が訪れ,また小惑星や彗星など原始天体探査ミッションが注目されています。探査方法もフライバイやオービタによるリモートセンシングから,ペネトレータ,ランダ・ローバによる探査,サンプルリターンと多種多様となっています。 深宇宙探査ミッションを支援する技術の1つとして,ロボティクス技術があります。地上では二足歩行ロボットや学習機能を有するロボット,感情を表現するロボットなどが実現されています。宇宙においても今後ますます進歩して,有能な情報収集能力と判断・意志決定のできる人工知能と探査機能を備えたローバが活躍する日もそんなに遠くないでしょう。また,マイクロナノテクノロジの進歩により小型軽量のロボットが多数,宇宙へ飛びたっていくことでしょう。そして,将来の夢としてマイロボットによる探査が実現できたらと思います。 マイロボットとは,文字どおり自分のロボットです。自分の思うとおりに動いてくれるロボットです。過酷な惑星環境で自分の代わりに探査をしてくれます。マイロボットは自律的に探査する機能を持っていますが,いつでも,自分の好きな時間に操作することも可能です。そして,ロボットが惑星上で体験したのと同じことを地球上で自分が体験することができます。 マイロボット(マイローバ)の種類は,目的に応じてさまざまなものがあります。自動車感覚で操縦できる車輪型,崖登りやでこぼこしたところでも移動可能な脚型,人間と同じように歩く二足歩行型,クレータの中や中央丘の上まで飛ぶことのできる飛行移動型,小天体など微小重力下で移動するホップ型,地中探査を行うモグラ型,小さい割れ目や穴に入って探査を行う昆虫型などなど。 マイロボットを用いた探査では,地上システムの高度なインテリジェント化が必要となります。使いやすいシステムであることはいうまでもありませんが,操作する人間が,あたかも惑星にいるという感覚を実現することが重要です。マイローバがセンシングした惑星環境をバーチャルリアリティ技術とテレイグジスタンス技術を駆使して,臨場感のあるiPSpace(intelligent Planetary Space)を造ることになります。iPSpaceという空間に身をおくと,マイローバが探査している天体に応じて,あるときは火星表面となり,あるときは小惑星表面となります。iPSpaceにおいてセンサグローブとセンサスーツを装着すれば,マイローバを意のままに動かすことができます。通信時間遅れの小さい月や惑星の場合には,例えば,iPSpaceにおいて石をつかもうと動作すると,月面のマイローバがマニピュレータで石をつかみ,つかんだ感覚が地上の操作者にフィードバックされます。石の裏側をみたり,割ったり砕いたりすることも可能です。通信時間遅れの大きい惑星の場合には,探査計画をたてるのに使用し,後に惑星探査を体験できることになります。 マイローバを用いて,自分の観たいところを積極的に観ることができます。探査シナリオは自分で作るのです。あなたも自分の探査ロボットを持ちませんか。 (くぼた・たかし) マイローバによる惑星探査
|
|
---|