所長 松 尾 弘 毅
明けましておめでとうございます。
ISASニュースの編集委員長を辞任してから,要するに所長に就任してから,早くも一年が経ち,新しい文部科学省のもとで新年を迎えることになりました。
昨年2月のM-V-4号機の失敗とそれによるASTRO-E衛星の喪失は返す返すも痛手でしたが,ようやく回復の軌道上を走り出しました。5年間で今回の事件の影響を克服するとの方針のもとで検討,折衝を重ねた結果,2002年末のMUSES-C(小惑星サンプルリターン)に始まり,以下LUNER-A(ペネトレータ),ASTRO-F(赤外線天文学),ASTRO-E II(X線天文学,ASTRO-Eの再挑戦),2005年のSOLAR-B(太陽物理学)に至るまでの新しいスケジュールを確定することが出来ました。関係各方面のご指導,ご支援と所員一同の努力の賜です。
ただ,このような宇宙研としての王道のみに専念してもいられない状況として,独立行政法人化の流れへの対応があります。大学と異なって所帯の小さな研究機関にとって,対応を検討すること自体が大きな負担ですが,もちろんゆるがせにする訳にはまいりません。この優れた制度を保存すべく大学共同利用機関共通の場を通じて議論を深めていくことになります。
最後に,失敗直後のESAのBonnet科学局長からの書信,
“・・・・I am sincerely sorry to learn that by now all hopes have gone. I believe that the scientists and technicians of ISAS do not deserve such a setback. I can assure you of my h igh appreciation of ISAS undertakings, marked by so many successes. Unfortun ately, space is an unforgiving business, as I know from personal experience with the first flight of Ariane-5 in 1996.・・・・”,
まことにその通りで,衛星は失いましたが自信は失っていません。我が国の宇宙開発の最も明確な基軸として,厳しい予算状況をも励みとして,この年に臨みたいと思います。
(まつお・ひろき)