宇宙科学の分野の国際協力はますます加速されてきました。下の表をご覧下さい。宇宙研の衛星は一つ残らず国際協力を行っていることがお分り頂けると思います。この傾向は世界的なもので,今や宇宙科学は国際協力なしには考えられない時代となってきました。これは単に経済的負担を軽くするということではなく,各国の宇宙科学の活動をうまく調整して,与えられた条件の下に成果を最大にしたいという宇宙科学者達の熱意の表れでありましょう。個々の科学者間の国境を越えたネットワークや強力な研究交流などの草の根的協力が先ずあって,それに合せてフォーマルな枠組を設定するという方式が大きな成果を挙げているといえます。
その典型的な組織にIACG(宇宙科学関係機関連絡協議会)があります。世界の4つの宇宙機関,宇宙研(日),NASA(米),ESA(欧),IKI(露)のメンバが集って宇宙科学ミッションに関する協議を行う組織です。1981年に発足しハレー彗星探査計画における国際協力に有効に働きました。1986年以降の10年間は太陽系地球科学が中心課題となり,日本の「あけぼの」 「GEOTAIL」「ようこう」が活躍しました。昨年のIACGでは次期の課題に月・惑星探査が決まりました。
この他にミッションの的を絞った国際組織としては,火星探査に関してIMEWG,月探査に関してILEWGが活動を始めました。また宇宙開発全般に関する国際的な組織としては,SAF( Space Agency Forum )が1993年に創設されています。
この他国際的な研究会や委員会,作業グループ,また2国間の協力に関する活動は無数にあります。最近のトピックスとしては,米国のオリジン計画について1997年の1月に日米科学者会議が日本で開かれたことは記憶に新しいところです。オリジン計画は米国が21世紀に向けて宇宙科学の中心的課題として設定した研究の略称で,宇宙,銀河系,星,惑星,生命のオリジン(起源)を解き明そうとする計画です。これらの分野は日本の科学者の関心と重り,今後広い意味での協力が期待されます。
国際協力には国の間の法体制の違いによる軋轢もありそれなりの苦労もありますが,科学者や工学者同志の協調に国境は無くなりつつあり,今後も宇宙科学の協力はますます深まっていくことでしょう。
(中谷一郎)
宇宙研ミッションの国際協力 |
打上げ年度 | 衛 星 | 国際協力の相手国 |
1988 | あけぼの | カナダ |
1989 | ひてん | 西独 |
1990 | ようこう | 米・英 |
1992 | GEOTAIL | 米 |
1992 | あすか | 米 |
1994 | SFU | 米 |
1996 | はるか | 米・ESA・豪・ロシア |
1998 | PLANET-B | 米・カナダ・独・仏・スウェーデン |
1998 | LUNAR-A | 仏 |
1999 | ASTRO-E | 米 |
2001 | MUSES-C | 米 |
2002 | ASTRO-F | 米 |