地球磁気圏内で起きる様々な現象と磁力線を通じて結合されている極域電離圏の現象をロケットで観測するために,1990年から1994年にかけての4回のオペレーションで3機のS-520と2機のS-310を,ノルウェ-北部のアンドーヤロケットレンジから打ち上げた。アンドーヤロケットレンジは北緯69度18分と,ほぼ南極昭和基地に匹敵する高緯度に位置するが,暖流の影響か,冬でも寒さは厳しくない。
第1回オペレーションではS-520-12号機(1990年2月26日,現地時間,以降同),第2回はS-520-14号機(1991年2月12日),第3回はS-310-22号機(1994年2月16日),第4回オペレーションではS-310-23(1994年11月24日)とS-520-21(1994年12月1日)をそれぞれ打ち上げ,何れも所期の観測に成功した。各オペレーションとも所内外から成る10余名の自称少数精鋭の実験班が現地に赴き,アンドーヤロケットレンジ職員の協力の下に,同レンジのランチャ,レーダなどの地上設備を用いて打ち上げた。
オーロラの生成機構の解明を目的とするS-520は,オーロラの中を通して打つと言う難物で,発射準備を整えた上で,発射方向に狙ったオーロラが現れるのを一晩中待つ毎日に,班員の疲労がつのる場面もあったが,目的を達成できて幸いであった。
実験班員はレンジ内の宿舎に宿泊し,第4回オペレーション以外は自炊で同じ釜の飯を食った。料理の心得のある班員には余計な負担がかかったが,彼らの貢献は大きい。現地で氷を踏み抜いて骨折した班員もいたが,ロケットの海外持ち出し等々で班員以外にも各方面の方々のお骨折りを頂いた。
(小野田淳次郎)