No.198
1997.9

ISASニュース 1997.9 No.198

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新スペースVLBI入門 (3)
口径と解像度

村田泰宏

 VSOPの画像ができるまでの概略を平林さんが2回の連載を通してしました。残りの4回で,私が個々の大事な点をもう少し掘り下げて御説明いたします。

 VSOPの説明をするときには,われわれは「口径3万キロメートルの電波望遠鏡をつくります。それで,非常に高い解像度で天体の像を得ることができます。」といいます。今回は,口径(望遠鏡の大きさ)が大きいとなぜ解像度があがるかという話をしたいと思います。

 まず,図1を御覧ください。大きなレンズと小さなレンズがあります。電波望遠鏡は,ほとんど凹面鏡を使っていますが,線が重なるのを避けるために,凸レンズを使って御説明いたします。しくみは凹面鏡も凸レンズも同じです。ひろがりを持たない天体からの電波はレンズの焦点でちょうど波が重なります。図1の大きいレンズではB,小さいレンズではEの点になります。GBとHBの長さは等しくなります。同様に,IEとJEも同じ長さです。

 ここで,「解像度」を考えるために,焦点B,Eから少しずれた点で信号の強さが,どのように変わるかを調べます。大きいレンズではAやCの点,小さいレンズではDやFの点です。これらの点は焦点から同じだけ離れています。しかし,大きいレンズか小さいレンズかによって中心に対する波の強さは,変わります。 図2を御覧下さい。実線は,レンズの上部を通った波,点線はレンズの下部を通った波を示します。焦点B,Eでは山と山,谷と谷がうまく重なり,波がうまく集まります。ところが,焦点からずれた点では波がずれます。点Aでは,GAよりHAの方が長いので,その分だけ波がずれます。C,D,F点でも同様に波がずれます。ただし,大きいレンズのほうが,IDとJDの差よりは,GAとHAの差の方が大きくなります(ほんとう? と思われる方は図にもの差しをあてて計ってみて下さい)。波の山のずれかたは,レンズが大きい程大きく,また,波の山と山の間隔(波長)が小さいほど大きくなります(図2(2),(3))。

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 このため,足し算したあとの波の大きさは,点D,Fのほうが,点A,Cより大きくなります。このことから,焦点の付近での波の強さのグラフを図1右に示します。天体が広がりがなくても,像は,レンズの大きさに反比例した広がりを持ってしまいます。

 それでは,これらのレンズで,ある間隔で離れた2つの天体を見た場合はどうなるでしょう?図3を御覧下さい。それぞれの天体からの信号が,図1の右側のグラフで示す像を焦点面に描きます(細い線)ので,それを足し合わせた結果,観測される天体の像は太線のようになります。大きいレンズの場合は,太線でピークが2つ出ますので,天体が2つあることがわかりますが,小さいレンズの場合は,ピークが1つになってしまうので,太線(観測結果)をみただけでは,天体が1つか2つかは区別がつきません。つまり,大きいレンズのほうが2つの天体を分離する能力,つまり解像度が高いということになります。これは,焦点に集まった波が通った経路(口径)が離れていればいるほど,解像度が高くなることを示しています。

(むらた・やすひろ)



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