No.194
1997.5

コラム

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天敵(点滴)打って頑張る

 長かった総合試験も終了し,相模原より無事衛星を送り出したのが1月10日底冷えのする寒い夜でした。我々衛星班先発隊は,1月13日早朝KSCに到着した衛星コンテナ下ろしから作業を開始した。作業は順調に進み,衛星をクリーンルームへ設置し,一息ついた矢先の夜,突然,39度以上の高熱に見舞われダウン,気のゆるみか,病院で点滴をうける羽目になった。長い間の試験の疲れがでたのか,この頃猛威をふるっていた悪性のインフルエンザにやられたらしい。先々いやな予感がした。
 その後,衛星は最終整備も終えロケットへ引き渡す日が来た。不具合(トラブル)は突然襲って来るものである。太陽電池パドルを押えているワイヤーのテンションが規定を外れて緩んでいるらしい。全く予想もしなかったトラブルである。調査してわかったが,ワイヤー受金具を取り付けている衛星ハニカムパネルの座に問題があることが判明した。我々衛星試験を担当するものにとって,トラブルは天敵のようなものである。どこに現われるかわからないモグラたたきである。限られた時間のなか,検討した結果,ハニカム(ハチの巣)構造の一個一個に充填剤を充填(点滴)し,補強することにした。
 このため全体のスケジュールを延ばす重度トラブルになったが,短時間で行った強度計算の見直しから,材料の手配,徹夜で行なった充填作業等,その頑張りは見事であった。その後の結果はご存知のとおりである。軌道に乗った衛星の太陽電池パドルは,非可視のところで無事展開した。眼を醒ましたハチも今ごろはにかんでいるだろう。
 トラブルをトラブルと見るか,見過ごすか,成功の鍵はそんなところにあるのかも知れない。

(井上浩三郎)



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ISASニュース No.194 (無断転載不可)