No.194
1997.5

コラム

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道に迷う

 「総員退避,X−15分」とアナウンスがある。実験班員は各々持ち場の配置につく。10年間自分達が考えられるすべてを結集して製造してきたロケットの飛翔が近づく。今まで約430機のロケットの飛翔に接してきている自分でも,この瞬間は言葉に表現できない緊張がある。特にM-Vは,ラムダがミューに成長した時より数段の緊張を感じる。
 発射何分前か,アナウンスで某助教授が呼び出された。「…先生,本部に連絡してください」。普通ロケット実験では発射寸前の大物個人の呼び出しは長年の経験からトラブルの発生の可能性が高い。ロケット実験班員の多くは「すわ,トラブル発生!」と嫌な予感が胸をよぎったことと思う。相模原の研究所でも同様に「トラブルでは?」と思った人が何人かいたと後で知った。
 某助教授が自分の行くべき退避場所を間違えて別の場所へ行ったのが原因で,「保安体制メモの正規の場所から本部にまだ到着していないが,どうしたのだろう」との問い合わせで捜していたという。どうやら実験場で道に迷ったらしい(本人は場所を勘違いしたとのこと)前代未聞である。この先何か道に迷わなければいいが‥‥。

(林 紀幸)



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2.4 猛練習は宇宙を制す
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