-
M-Vの成功に亡き友を偲ぶ
1997年2月12日,M-V-1号機は快晴の空に白煙と轟音を残し旅立って行った。この晴れの舞台と成功の喜びを共有したかった男達がいた。M-V開発にこだわりと情熱を燃やした男達,斎藤 敏,中田 篤である。
M-V開発途上の91年中田が,92年斎藤が病魔に侵され相次ぎ夭折した。斎藤は能代,鹿児島の計測班として,緻密で妥協を許さない職人芸と斎藤美学に支えられたこだわりの仕事を,中田は広い視野から真摯に計測班を支えた。また,中田は冷静な判断力で構造・ランチャと広い守備範囲の仕事をこなし,次代を担う若手グループのホープとして期待されていた。
彼らの仕事は計測精度の向上に結実し,特にモータ性能は燃焼試験の結果からの予測値と完璧に一致する結果を得た。軌道に載った衛星『はるか』命名者の一人に今夏七回忌を迎える中田の愛娘,詩ちゃんの名があった。
こだわりの彼らは今でも『ようこう』と『あすか』から我々の仕事を見守ってくれているに違いない。
(今澤茂夫)
ISASニュース No.194 (無断転載不可)