No.194
1997.5

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4.4 光で見たM-V-1

 撮影装置には16沚qャ度カメラ,35沁B影機があるが,16沚qャ度カメラは,発射状況の撮影などに適している。今回の発射方向は真東だったので,北側になる第5光学で2台,整備塔11階(第6光学)で1台の合計3台を毎秒500コマで使った。

 カメラは大型三脚または台座を用い,撮影視野を予め設定し,専用電源を持つ信号起動タイプであるため打上げ時は無人で駆動される。X時に晴れている場合は,撮影露出が第5光学で逆光になる事を考慮する必要があり,第6光学と共に発射時の噴射火炎輝度をも重視しなければならないが,フィルム感度JIS100 〜125に対し,コマ当たりのシャッター速度は1/2,000 〜1/2,500秒,絞り値はf:5.6〜8とした。

 このデータは,実験時にこれらの観測点に人を配置できないため,予め天候・照度チェックを行って決めたものだが,高輝度の火炎に対し適性露出にすれば,機体・整備塔及び背景の陸地・海面が暗く潰れ,背景が適性露出ならば火炎輝度に負けて画面が白っぽく,状況が見難くなるし,曇天の場合火炎にのみ適正露出としなければならないというように,天候に不安を持ちながらの設定であった。

 結果は,運良く当日の天候が薄雲のある晴天だったので良好な記録となり,長さ29.5mのランチャーを脱するのに約2.46秒かかった。これはM-3Sの平均値1.94秒に対し,約0.52秒ほど遅い発進であった。

 35沁B影機は追跡架台上で使うが,16气Jメラに対し画面が大きく画質が良いので,第1光学および第3光学で長焦点ズームレンズ,超望遠レンズ等と組み合わせ,毎秒30コマで遠方記録に使う。

 現象に対しシャッター速度は1/1,000秒程度だが,視野を低照度の陸地から高照度の上空まで旋回掃引させるため,背景が変わるにつれ十数倍(f値2段階以上)の露出の過不足が現れる。

 光学追跡架台装置には,手動追跡装置とサーボ駆動追跡装置があり,旋回軸には光学式ロータリ・エンコーダが組み込まれ,それによる角度データは,35沁B影マスク下端の点状LEDアレイに時刻データと共にBCD表示し,飛翔状況と共に画像記録され,且つコントロール・センターにも信号送出する。

 架台上TVカメラでは,追跡映像に時刻及び角度データをスーパーインポーズして映像送出するが,いずれも飛翔保安確認に用いられる。

 第1光学手動追跡装置での追跡旋回操作は,発射直後のロケット上昇にタイミングが合えば後の操作が楽だが,その時,急上昇するロケットを追跡眼鏡を通して直視出来る事が重要である。

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 今回は,ミュー発射点と第1光学の間にあるKS台地の50m風向風速塔と整備棟が視界を阻み,角度セット後のフェアリング先端が僅かに見えると言う状況で発射されたが,ロケットは50m風向風速塔の向う側を塔に沿い上昇したため視野から逃がし,更にその後の噴射残留煙で飛翔を隠され追跡不能となった。

 第3光学のサーボ駆動追跡装置は,パソコンから出力する角度データ信号による駆動コントロール(プログラム駆動)と追跡角度データのパソコン収録ができるシステムを持ち,M-V-1ロケットのノミナル軌道デ ータを用いて,がたつきが無く,雲があっても安定した画面で追跡してX+162秒まで飛翔確認をした。

 画面では,発射数秒後にロケットがわずかに頭下げをする様子,姿勢の修正で小刻みにピッチングする様子,またX+75秒付近のファイア・イン・ザ・ホール等が明瞭に記録され,M-3S以上に良好に機能制御されている様子が伺え,迫力のある飛翔だった。

 終わりに,今回のようにロケットが大型で飛翔が安定してくると,今まで重要だった風による軌道分散を確認すると言うよりは,前記のように安定した画像記録により飛翔機能を観測確認することの方が大事になりつつあると考えられ,その為には不安定な手動方式でなくロボット台座などを用いるプログラムコントロールが可能な光学追跡装置を開発使用すべき時期に来ているように思う。

(喜久里 豊)



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