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SFU公開


 3月28日,SFUが日本へ帰ってきた。横浜港で喫水の浅いはしけに積み替えて,江の島港で陸揚げし,三菱電機に運び込まれたのが4月5日。翌週,開梱早々に外観を見る。回収時のNASAテレビ映像でも,KSCで垣間見たときも「奇麗だ」との印象が強かったが,その後にKSCを訪れた二宮教授から「表面は大分荒れている」と聞き自分の眼で確かめたいと思っていた。再会の第一印象は変わらなかったが,顔をすりつけるようにして見るうちに「あら」が見えてきた。デブリ(正確には惑星間塵を含む)の衝突痕,UVによる塗料褪色,MLIの裂けなどだが,密度が少ないので気を付けないと見過ごしてしまう。MLIに奇妙な衝突痕が見つかった。図のようにMLI第一層を貫通したデブリが第二層にクレータを形成し,その際噴出したと考えられる二次ジェットによって,第一層裏面に蒸着されたアルミ層が消しとんでいる。表面に残されたカプトンが透明な窓となって,天眼鏡で第二層の様子がよく見える。随分と器用なことをするものである。IRTSの最外部には放電痕のようなフラクタルパターンが見られ,降載後の解析が楽しみである。「あら」は見えてきたが,通った三日間の去り際には,やはり「奇麗だ」と思えた。

(栗木恭一) 


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NASAスタッフとのSFU技術検討会

 STS−72 宇宙飛行士を含むNASAスタッフが宇宙科学研究所を訪れた。4月23日,快晴。玄関前には共和小学校4〜6年の生徒が出迎え,バスを降りるやいなや一行をとり囲んだ。聞くところによると,生徒らはこの日一日中興奮して,授業も宇宙討論会に切り替わった由。所長への表敬では記念パネルがブライアン・ダフィー船長より西田所長へ手渡され,記者会見,昼食と続いて話がはずんだ。「NASA管制室(MCC)と相模原管制室(SOC)との会話が全国ネットで放送され,ヒューストンとサガミハラの名が飛び交ったことで相模原は一躍有名になった」と伝えると,ご同慶としたうえで,「SOCチームの対応は見事であった」とお褒めの言葉を頂いた。訪問の主目的であった飛行後技術検討会では,飛行運用の予定手順からのずれ,太陽電池パネルの収納・切り離し解析の中間報告などが討議された。SFU/シャトルの交信中に通信の一時断があり,シャトル側でも送受信機の性能検討を行うこととなった。回収運用の一部始終を8ミリビデオで撮っていたダニエル・バリー飛行士からは「太陽電池パネルが畳まれている最中に,折り畳みの粗密波が縦波となって伝播していた」との観察が聞かれ,今後の解析にとって新たな情報が得られた。最後に一行はSOCの見学を行い,メンバーと旧交を温めた後帰路についた。技術検討会第二部は4月25日USEFで行われた。

(栗木恭一) 

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ペネトレーターアンテナの砂面利得測定実験

 ルナーA 計画のペネトレータは,月面に貫入した後に,月の砂中から400MY帯の電波を上空の母船衛星に向けて送信します。このための送信受信アンテナは,RF特性(誘電率)も不確定性のある月の砂から電波を出すという特殊性を持ちます。この開発のためには,通常のアンテナ開発のような電波暗室が使用できず,かわりに広大な乾いた砂の空間が必要です。  このような広大な砂場を用いた試験の必要性は,従来より叫ばれていましたが,ペネトレータ本体構造がようやく昨年冬に決定した事を受けて,4月2日から4月27日の期間に能代実験場で行なわれました。

 タクシー無線等の電波障害がなく,実験支援の体制も整っている能代実験場の大気燃焼棟のわきの砂浜に,深さ4m,巾6mの穴をほり,土のうでかためる工事をしました。大きなビニールシートを大風呂敷の要領でひろげて,オーストラリアから輸入したケイ砂という白い乾いた美しい砂を,60tダンプカーで運んできて,ぶちまけました。

 ルナードームと名づけられた直径20mのエアードームを写真のように設営して,その中で26日間,アンテナの実験を行い,一部機器の変更の必要が判明したものの,所定のアンテナ性能が得られる事が確認されました。

 実験期間の延長については御迷惑をおかけしました。なお,このエアードーム本体は再び利用できるので,将来いろいろ活用される事を望みます。

(齋藤宏文) 

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「ようこう」国際研究集会開催

 「ようこう」衛星は,この春で打ち上げ以来4年半になるが順調に観測を続けている。やがて来る5周年を目指して,内外の関係者は運用とデータ解析に忙殺されている一方,共同研究相手の英国グループが音頭をとり国際研究集会が3月20〜23日英国で開催された。名付けて“「ようこう」研究集会:太陽大気中での磁気リコネクションの観測”である。

 空間につくられた磁場はそれ自身がエネルギー(磁気エネルギー)を持っている。プラズマ中の磁場の配位が変わることにより磁場のもつエネルギーがプラズマの運動や熱エネルギーに変わることを磁気リコネクションによる加速・加熱とよんでいる。この現象は,「ようこう」の観測により太陽表面で,またGEOTAILの観測により地球磁気圏で明確に確認され,天体,宇宙空間における高エネルギー現象の重要な形態の一つとして注目を集めている。

 研究会は,これまでの「ようこう」の成果を集約するものとも言える内容であった。場所柄,英国,米国の研究者を中心にヨーロッパ近辺の国の参加者が圧倒的に多く,日本からはこの種の研究会としては異例に多い19名ほどが参加して積極的に発表や討論に参加したが,残念ながら数の上では少数派であった。日本の衛星の研究集会が外国の強い希望で国外で開かれたのは,決して初めてでは無いと思うが,わが国の衛星観測の国際化を示す象徴的なことである。

(小川原嘉明) 

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PLANET-B構造モデル試験

 標記試験が,1月12日から4月5日にかけて,NEC の横浜工場にて行われました。PLANET-B は,1998年夏期に,M-V型ロケットの3号機で打上げる予定の,火星周回探査機です。PLANET-Bは,1992年度より開発に着手し,既にPM(プロトタモデル)の試作,試験を終え,現在FM(フライトモデル)の設計段階にあります。開発の当初より,軽量化が大きな課題の一つであり,構造的にも軽量化の極限を狙いました。そのため,今回の構造モデルによる静荷重,音響,振動,落下衝撃等の試験で,問題を生じなければよいか,関係者一同,密かに心配していました。結果は,良好で,軽量化構造の設計の正しさが確認され,一同,ホッとした次第です。今後,熱モデル試験へと進みます。写真は,初めて,全体形状を見せたPLANET-Bの構造モデルです。

(中谷一郎) 

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第15回宇宙科学講演と映画の会


 4月13日(土)午前2時から、JR千駄ヶ谷駅前・津田ホールにおいて,第15回宇宙科学講演と映画の会を開催いたしました。当日は晴天で,お花見に好都合の日であったが,開場前から多くの方々がロビーで待っている状況で,13時30分開場を30分も早くしなければならない程でした。500人収容の会場は,子供から大人まで幅広く詰めかけていただきました。多くの方々が来場していただいたのは,若田宇宙飛行士がSFU回収した影響,今回の講演内容が,SFUで実験した赤外線,今年9月打上げ予定のM-V型ロケットと話題性も多く,なお,学校が休みとなる第2土曜日に開催した効果も少なからずあったと思われます。

 500人収容の会場は,満員となり,後ろでは立ち見もでる程の大大盛況であった。

 14時,的川教授の軽妙なる司会により開会,西田所長の宇宙研の将来計画,当日の講演者を宇宙科学全体像から紹介されました。

 奥田教授が「暗黒の宇宙を探る ―赤外線で見る宇宙―」,小野田教授が「宇宙科学の夢を運ぶロケット M-V」を講演されました。

 質疑応答では,
  研究所の有人飛行計画は?
  スペースデブリによる防御は?
  宇宙開発による波及効果は?
  何故専門家は百武彗星を発見できないのか?
  M-Vの開発経費は?
等多くの質問が寄せられ,予定の時間が過ぎても,質問がつきなく,途中で終わらせなければならない程の盛況でした。

 質疑応答の後,映画「ブラックホールをさぐる」を上映し,無事盛況のうち終了しました。

(佐々木英俊) 

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